福祉実習を通して

2022.12.16(金)

ひふみ

Writer:hifumi

 私は、今年の夏休みを通して「高齢者福祉施設(介護老人福祉施設)」にて実習を経験させてもらった学生です。
実習の中では、その施設の中で生活をされている利用者さんにとっての安心・居心地の良さとは何か、を中心にして様々なことを考えました。

実習に行く前は施設という場所について、閉鎖的で集団生活ゆえにそれぞれの思いが尊重しづらい側面があるという、ややネガティヴな気持ちを抱いていました。
しかし、実際に実習中に職員の方々や利用者さんからお話を伺ったり、活動に参加させていただいたりすることで、
施設というものがイメージ以上に閉鎖的でないことや、笑顔があふれていることに気が付きました。
もちろん、自分自身の日常と照らし合わせてみて違和を感じる部分もありましたが、専門職の方々も同じようにジレンマを抱えながらも、
日々その方にとっての幸せとは何かを考えながら奮闘しておられるようでした。

中でも、ケース会議におけるケアマネージャーの方の姿に感動したことを覚えています。
現場で起こる一つの大きなジレンマとして、利用者さんの思いを取るか命を取るかというものがあると思います。
例えば、施設で入所されている誤嚥性肺炎のリスクのある方が、
『お気に入りのレストランに行って温かい料理が食べたい』との気持ちを表現してくださったときに、
専門職としてどのような向き合い方ができるでしょうか。この思いを実現してもらうためには本人の状況はもちろんのこと、
施設という性質上周りの利用者さんのことも考えなければなりません。昨今のコロナ禍の状況を考慮すると、
施設から外に出ることでその方がコロナに感染し、施設内でクラスターが起きるリスクもあります。
(こうしたことを考えると、コロナ禍で利用者さんの思いに寄り添い実現していこうとされている専門職の方々は本当に素敵だと思います。

また、少しでも利用者さんの安心や楽しみを増やそうと、オンラインでの面会や催しをされているご家族さんや地域住民の方々も、
とっても素敵だなと思います。)ここでリスクがあるならばと、諦めることは簡単です。
しかし、それが本当にその施設で生活されている利用者さんにとっての、安心や居心地の良さに繋がるのでしょうか。
これに似たようなことが前述したケース会議の中でも話し合われており、
その利用者さんのニーズを身近に聴いておられるケアマネージャーの方が、必死にその方の思いを代弁しておられました。
あれではだめならこれではどうか、と。できないと言われても引き下がらない態度、実習一日目にしてシンプルにその姿に涙しました。

リスクばかりを挙げて無理な理由を探すよりも、リスクを踏まえたうえでその方の思いを実現していくためにできることは無いだろうか、
と模索する過程こそが一人ひとりの安心や居心地の良さに繋がっていくと言えるのではないでしょうか。
ときに諦めも必要ですが、その模索の行きつく場所には、諦めも必要と言わなくてもよい福祉のあり方が隠されているのかもしれません。
そんな可能性を抱きながら、これから先も福祉について一層の知識の習得と、自分自身の姿勢を磨いていきたいと思っています。