「必要な依存が自立を助ける」

2024.11.05(火)

ひふみ

Writer:hifumi

「必要な依存が自立を助ける」。 
著書『こころの処方箋』(新潮文庫)で、そう指摘するのは心理学者の河合隼雄氏。 
人は、互いに助け合って生きている。「依存を排して自立を急ぐ人は、自立ではなく孤立になってしまう。と 
 
「自立とは依存先を増やすこと」。そう発信しているのは、東京大学先端科学技術研究センターの熊谷晋一郎教授。 
脳性まひで手足が不自由となり、電動車いすを利用する自らの体験に基づく考えだ 
 
東日本大震災の時、教授は5階にある職場から逃げ遅れた。 
エレベーターが止まったからだ。 
他の人は、はしごや階段を使って避難できた。だが、教授には避難を可能にする“依存先”がなくなっていた。 
 
教授は感じた。世の中のほとんどのものは健常者向けに作られている。 
その便利さに依存している事実を意識することなく健常者は暮らしていける。自立とはどんなものにも頼らずに生きていけることではない。 
依存先をたくさん持っていることなのだ。 
 
教授は心から思った。 
「自立は依存しないことではなく、依存できることを世の中に張り巡らせることだ」「これは障がいの有無にかかわらず、すべての人に通じる」(2022年4月5日付公明新聞より)と。